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2011年05月19日

原発事故と鉄腕DASHと幸福

「鉄腕DASH」には、これでもか、というぐらい、「食べること」に時間をかけるコーナーがある。
ゴハンを食べるために米をつくったり、味噌汁のためにワカメを胞子から育てたり。
番組の企画ネタ、とか、道楽、のようにも見えるが、
考えようによっては、産業構造を変えよう、というメッセージなのかもしれない。

古くの日本は、食糧の自給率が100%だった。(他国との交流がなかった時代はあたりまえ)
ところが、今はかなり低い。
理由はいろいろあるが、そのひとつは、食料生産という産業(第1次産業)にかかわる人口が減ったこと。
その分、工業製品の生産(第2次産業)やサービス業(第3次産業)などの人口が増えた。

でも、第2次産業や第3次産業の増加は、戦後の大量生産大量消費のパラダイムに基づいている。
すなわち、大量生産大量消費を拡大し続けないと、第2次産業も第3次産業も成長できない。
でも資源は有限だし、地球温暖化は(人類に不利益があるから)いやだし、
トドメのように、東日本大震災と原発事故に伴うエネルギー(電力)不足。

このエネルギー不足に対して、なんとか生産現場や節電、発電所の稼働率アップで、
第2次産業と第3次産業を維持しようとしているが、
考えようによっては、産業構造そのものを変えるチャンスなのではないだろうか。

そもそも工業製品の大量生産大量消費は、それほど必要ないものでも、
広告によって必要かも、いいかも、と思わされている面は、ないことはないと思う。
新しい製品が出たら買わなくちゃ、という強迫観念を作られているから、
作る側も、新しい製品を作らなくちゃ、ということになる。

しかし、仮にこれが幻想だとして、
「鉄腕DASH」のように、「食に手間暇をかけること」に幸福を見出せるならば、
第1次産業の就労人口が増えて食料自給率も上がり、
(実はそれほど必要でもない)工業製品の生産のための第2次産業人口も減るし資源の浪費も減る。
田舎暮らしは寂しいかもしれないけど、新幹線とインターネットがあれば、
まあなんとかなるんじゃないかな。

三欲、というけど、この方法で、食欲(と他の二つの欲)が満たされるので、
工業製品所有欲、というのは、あまり気にならなくならないかな。

「そんなことしたら景気が悪くなるじゃないか」という経済団体とか政治家とかマスコミは、
戦後成長期の「大量生産大量消費」パラダイムとそこに基づく既得権益を守ろうとしているんじゃないかな。

今回のエネルギー不足を、(原因はどうであれ)この「大量生産大量消費」パラダイムを
見直さざるを得ない機会、ととらえて、
既得権益は一切忘れて、
人間の本能である食欲を満たすために第1次産業に多くの人が回帰する、
というのは、できないものだろうか。

別に景気が悪くても、GDPが世界上位じゃなくても、株価が下がっても、
食べるのに困らなければ、けっこう幸せなんじゃないだろうか。

そんなことを、原発事故と鉄腕DASHから考えたけど、
どうもうまくまとまらないな。

投稿者 akita : 2011年05月19日 22:12

コメント

今回のことは(進行中の)大惨事なのは勿論だけど、国のあり方を考えるチャンスかも知れないよね。個人的には一極集中で腐敗した色々を引き離すチャンスはそうそうないと思うし、産業構造・ライフスタイルの転換もそうかもね。これを転換点にできなければよっぽど悲劇だし、浮かばれない気がするよ。

投稿者 yuish : 2011年05月20日 21:46

コメントありがとうございます。
最近の様子を見ていると、そろそろみんな忘れかけていて(あるいは忘れさせようと政治とメディアが動いているのかもしれない)、元に戻りかけているような気がして心配なのですが、
電力不足という物理的な制約が、いくら火力発電所再稼働前倒しなどで努力しても、物理的に解決できないことが、一連の転換の強制的なトリガーになると思うんですよね。電力会社のがんばり(?)で、電力不足が解消できてしまのが、実は千載一遇のチャンスを逃す悲劇なのかもしれない、そんなふうにも思います。

投稿者 akita : 2011年05月21日 10:26

初めまして!
食糧生産の未来に関して興味があるので、面白く読まさせていただきました。

 個人的には、食糧生産の産業の門戸が広く開かれていれば、「会社辞めてもなんとか食ってけるか」っていうことで、サラリーマンのストレスも減るかなと思ってます。サラリーマン生活も大事だと思うんですけど、会社でうまくいかないからって自殺するような、強迫観念的な社会の雰囲気はおかしいと思ってます。

投稿者 M2の学生 : 2011年11月11日 15:08

コメントありがとうございます。そうなんですよね。いまだと、農業で食っていく(必ずしも生計を立てる、という意味ではなく、文字通り生きていくという意味(+αで少し収入を得る))ことに対する意識がかわっていけば、そこに入る意識のしきいが下がるとおもうんですけどね。

投稿者 akita : 2011年11月11日 15:27

生活の側から産業構造を考える姿勢は重要だと思います。しかし、現代の農業は1次産業とは言えないのではないでしょうか。除草剤耐性作物問題に見られるように、バイオテクノロジーに依存する農業は、農業環境を根底から破壊します。また、鉄腕DASHはエネルギーをどれだけ消費したかを問題にすべきだと思います。世界の耕地面積は、砂漠を除くと、ほぼ飽和状態だと聞いています。耕地をを増やすこと=環境の破壊に繋がる状況です。食料生産量は増加しているようですが、これは、耕地面積を増やさずに、耕地面積当たりのエネルギーの消費量を増やすことで達成さえれていると思われます。この状態で、全員が農業を始めたらどうなるのか?ということが心配です。必要なことは、耕地面積当たりの実質的なエネルギー消費量を減らす技術の開発だと思われます。
私の父は、農学者・獣医師・畑作りの実践者でしたが、子供の頃は、自分で食べるものは自分で作れと、畑作りをさせられました。幸か不幸か、今の子供と違って勉強しろと言われた記憶はないですね。しかし、農業は電子回路のように数年で水準に到達できるような簡単なものではありませんし、夏に土地を作り、冬の凍った畑で収穫するのがどれほど苦痛を伴うか。それを楽しみの一つとして頑張る覚悟があるなら、人間を資本とする低消費エネルギー農業を実践できるかもしれません。幸い日本は人口が減少する方向にあるので、肉食を止めれば、自分の食べるものを自分で確保する耕地面積が確保できるかもしれません。私も、そういう幸福な生活を夢に見ることはよくありますが、農業に関する知識が全く欠落していることが現時点での問題です。私の父の田舎は、滋賀県の湖北にありますが、ここでは農業を基盤とした生活がまだ生きていて、生活のクオリティが非常に高いことを感じます。なにより、食べ物が異常に美味しい。想像ですが、現在の田舎暮らしは決して寂しくもないし、都会より忙しいぐらいで、年寄りの元気さには驚くほどです。

投稿者 kitagawa : 2012年02月12日 01:17

コメントありがとうございます。
ふむふむ。たしかに、鉄腕DASH的農業は、エネルギーをずいぶん消費しているので、贅沢道楽と言ってもいいレベルかもしれません。
が、エネルギー・資源の枯渇は、人口が増え続ける前提がありますよね。個体の増加繁栄は生物としての基本的戦略かもしれませんが、そろそろ人口が減る前提の社会があってもいいのかな、という気もします。実際、これからの日本は人口減少が進むわけで、それが常にネガティブなこととしてとらえられていると思うのですが、それがもつ/もたらすポジティブな面を積極的に生かすような社会にしていくのが、いいんじゃないかな、と思うわけです。(例えば現在の東京の人口集中の度合いは、どう考えてもおかしいですよね)

投稿者 akita : 2012年02月12日 11:40

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